📋 この記事で分かること
  • 旧加算からの再編で評価軸がどう変わったか
  • 新加算3区分の全体像と、区分の分かれ目になる要件
  • 6月施行に向けて確認しておきたいIT運用の入口
  • 現状把握から段階的算定までの進め方
  • 立入検査対応・補助金との関係をどう整理するか

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対象読者: 開業済みクリニックの院長・事務長で、新加算の存在は知っているが、自院がどう動くかの全体像を整理したい方。

加算再編の本質 ―「導入」から「利用実績」へ

2026年度の診療報酬改定で、旧「医療DX推進体制整備加算」と「医療情報取得加算」が廃止され、「電子的診療情報連携体制整備加算」に統合されました。

名前が変わっただけではありません。評価の軸が「システムを導入しているか」から、導入したものを使って実際に情報連携しているかに変わっています。

象徴的なのがマイナ保険証利用率の扱いです。すべての加算区分(加算1〜3)で、レセプト件数ベースの利用率30%以上が共通の必須要件になりました。30%を下回ると、どの区分も算定できません。

⚠️ 旧基準との混同に注意

旧・医療DX推進体制整備加算では60%や70%といった段階的な引き上げ基準が設定されていましたが、新加算では水準が見直されています。旧基準の数値で判断しないようご注意ください。また、マイナ保険証利用率には経過措置がありません。

もう一つ重要な変更点が、旧加算からの自動移行はないという点です。旧加算を算定していた医療機関でも、新加算を算定するには再届出が必要です。「これまで算定していたから自動的に切り替わる」と考えていると、6月以降の算定が止まってしまいます。

なお薬局向けの「電子的調剤情報連携体制整備加算」は、旧加算を算定中であれば再届出不要となっています。医科とは扱いが異なるため、薬局の方は告示・通知でご確認ください。

新加算 3区分の全体像

新加算は初診時に3段階の点数が設定されています。再診はどの区分でも一律2点(月1回)です。

区分初診再診必要な要件
加算34点(月1回)2点(月1回)共通要件のみ
加算29点(月1回)2点(月1回)共通要件 + 追加要件A/B/Cのいずれか1つ
加算115点(月1回)2点(月1回)共通要件 + 追加要件A/B/Cすべて

旧・医療情報取得加算では再診の算定頻度が「3月に1回」でしたが、新加算では「月1回」に変更されています。算定機会が増える点は、収益面で見落とせない変更点です。

💡 区分の分かれ目はどこにあるか

マイナ保険証利用率30%はすべての区分で共通の必須要件です。区分の差は、追加要件A(電子処方箋)・B(電子カルテ)・C(情報共有サービス)の整備状況で決まります。加算1と加算3の初診時の点数差は11点。患者数によっては年間で無視できない差になります。

追加要件A/B/Cの中身、自院がどの追加要件を満たせるかの判定方法は別記事で扱います。本記事では、まず制度の全体像と、6月までに何をすべきかに焦点を絞ります。

経過措置の違い

経過措置は要件によって扱いが異なります。

要件経過措置
マイナ保険証利用率30%なし(30%を下回った時点で算定停止)
電子カルテ情報共有サービス(CLINS)の利用実績当面の間、準備中でも一定の条件で算定可(※後述)
📝 CLINS経過措置の期限について

令和8年3月発出の通知(保医発0305第7号)では「当面の間に限り、当該基準を満たしているものとみなす」と表現されており、具体的な期限は明記されていません。中医協での延長議論では令和9年5月末までの延長案が示されていましたが、最終通知では明示されず「当面の間」となっている点に注意が必要です。最新の通知・疑義解釈をご確認ください。

加算算定の前に確認したいIT運用の入口

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新加算は「実際に使っているか」が評価軸になっているため、システム導入だけでなく日々の運用が問われます。詳細チェックリストは別記事に譲り、ここでは入口になる4点だけ整理します。

1

オンライン資格確認の利用率と窓口フロー

システムが入っていても、受付スタッフの声かけや患者への案内が利用率に直結します。マイナ保険証の現状利用率と、利用促進の運用余地を確認します。

2

電子処方箋の発行体制

加算1・2では電子処方箋発行体制が問われます。レセコンや電子カルテが対応しているか、対応している場合に発行フローが整っているかをベンダーに確認します。

3

電子カルテ情報共有サービス(CLINS)の接続状況

加算1ではCLINSの利用実績が要件に含まれます。CLINS対応可否や対応時期は電子カルテベンダーによって異なるため、早めに確認しておくと判断材料が揃います。

4

明細書発行体制等加算の併算定不可

新加算と明細書発行体制等加算(再診1点)は併算定できません。新加算の施設基準に「明細書を患者に無償交付していること」が含まれているためです。レセコンの算定マスタから当該加算を外す設定変更と、受付スタッフへの周知が必要になります。

⚠️ レセコン設定の確認は早めに

明細書発行体制等加算の設定が残ったまま新加算と両方算定してしまうと、返戻の対象になります。届出と並行してレセコンベンダーに設定変更を依頼しておくと、6月の算定開始時に慌てずに済みます。

6月施行ロードマップ

ここまでの変更点を踏まえ、6月施行に向けた進め方を3つのフェーズで整理します。

1

Phase 1:現状把握(今すぐ)

自施設のマイナ保険証利用率、現在算定している加算と新制度との対応関係、ベンダーの電子処方箋・CLINS対応状況を確認します。「自院の現状をテーブルにする」ところから始めると、次に何をすべきかが見えてきます。

2

Phase 2:加算3の確保(〜5月)

マイナ保険証利用率30%以上を維持する受付フローを整え、共通要件を満たす状態にします。届出の提出期間は5月7日〜6月1日。届出が遅れれば算定開始も遅れるため、逆算して準備します。

2026年5月8日付の疑義解釈その5(別添1 問1)で、外来側の届出運用が明確化されました。初診料(A000 注16)分の届出を提出していれば、再診料(A001 注19)・外来診療料(A002 注10)分の本加算については追加の届出は不要です。様式1の6を場面ごとに分けて出す必要はなく、外来側は初診料分として1通通せば完結します(入院加算 A207-5 はこの疑義解釈の対象外で、様式18の4による別途届出が必要)。

3

Phase 3:上位加算への段階移行(6月以降)

加算2を目指すなら追加要件A/B/Cのいずれか1つを整備します。加算1を目指すなら3つすべてが必要ですが、CLINSの経過措置(当面の間のみなし扱い)が解除されるタイミングを念頭に計画を立てます。

💡 まず加算3、次に加算2、加算1は中期目標

加算1はA/B/Cすべての整備が必要で、現時点ではCLINSの本格稼働や認証電子カルテなど未確定要素も残っています。いきなり最上位を狙うより、まず加算3を確保し、自院に取りやすい追加要件から1つ整備して加算2、加算1は中期目標とする進め方が、小規模クリニックには現実的です。

入院施設がある場合は要件が増える

外来加算を中心に整理してきましたが、入院施設を持つ医療機関の場合、入院加算1(160点)には外来加算にはないセキュリティ要件が個別に課されます。具体的には、専任の安全管理責任者の配置、年1回の研修、オフラインバックアップ(3世代以上)、BCP策定と年1回の訓練などが含まれます。

📝 外来のみのクリニックの場合

外来のみの無床クリニックでは、入院加算で求められる個別要件は通知上課されません。ただし「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制(責任者の設置、職員教育、バックアップ、非常時手順)は規模を問わず求められるため、規模に応じた対応は必要です。

書類整備・補助金との接続

加算の算定要件を満たすことと、サイバーセキュリティ書類が整っていることは別の評価軸です。加算を取ったからといって、立入検査で問われる書類整備が免除されるわけではありません。

ただ実務上は、加算対応で整理したIT運用が、立入検査の機器台帳や運用管理規程の更新にもそのまま使えます。逆も同じで、立入検査対応で整えた書類が、加算の届出時の根拠資料として活用できます。

立入検査で求められる4書類(機器台帳・運用管理規程・連絡体制図・BCP)の中身については、運営フェーズの記事で詳しく扱っています。

また、加算対応でIT基盤を整えるタイミングは、IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金2026)を検討する好機でもあります。GビズIDプライムやSECURITY ACTIONなど、補助金申請前に整えておきたいセキュリティ準備については、別記事で扱う予定です。

薬局・歯科版の取扱い

薬局向けには「電子的調剤情報連携体制整備加算」、歯科向けには「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」がそれぞれ新設されています。「導入」から「利用実績」へという評価軸の転換は共通ですが、要件の細部や届出の扱い(薬局は旧加算算定中なら再届出不要、医科は再届出必須など)は異なります。薬局・歯科の方は、自施設に対応する加算の最新の告示・通知でご確認ください。

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※本記事は2026年4月時点の公開情報(厚生労働省 告示第69号・告示第70号、保医発0305第7号 等)に、2026年5月8日付・疑義解釈資料その5の内容を反映して整理しています。経過措置や運用詳細は今後変更される可能性があるため、最新の告示・通知および管轄の地方厚生局へのご確認をお勧めします。